【NARUTO】ごめんなさいから始まる物語【トリップ】
第5章 木の葉の美しき碧い野獣
七海は定刻通り仕事を終え、いつもとは違う道を通り帰ろうとしていた。
(ここにお団子屋さんとかあるんだ…)
里の中には行ったことない場所が未だ多くあり、それらを探索しながら帰るのが最近の日課になっていた。
キョロキョロしながら町を見て回っていると、遠くで誰かが叫ぶ声が聞こえた。
ちょっとした野次馬精神で近づいてみると、どうやら一軒の居酒屋を中心に騒ぎが起こっているようだ。
「大変だ!リーが暴れだした!」
騒ぎの中心で大声を上げているのは、どこかで見たことがあるような、ないような緑色の全身タイツの男だった。
「ガイ先生ぇ!僕はまだやれますぅ」
信じられない光景だが、呂律の回っていない青年が、店の壁を蹴り、床を殴り、その体一つで見る見る間に建物を壊していた。
「ネジ!テンテン!リーを抑えろ!」
男が叫ぶと、長髪の青年とお団子ヘアの女性がどこからともなく現れ、まるで瞬きするような素早さで戦闘態勢に入った。
木ノ葉隠れの里は忍の里というだけあり、町中で騒ぎが起こることはまれにあった。
最初こそ驚いたものの、慣れというのは怖いもので、最近は多少のことでは驚かなくなっていた。
(それにしても、今回は大騒動のようだな…)
好奇心が勝ってしまい、私は巻き込まれない範囲で遠巻きに眺めていた。
すると、
「ガイ先生ぇ!里の周りを逆立ちで500週するまで、今日は帰れません!!」
そう叫びながら、先ほどの青年が通りに飛び出してきた。
通行人たちは騒然として、いそいそと青年が通る道を開けた。
一方で私は反応が遅れ、気付いたら道の真ん中に取り残されてしまっていた。
まずい、衝突する。
そう思うのとほぼ同時に、青年が真正面から勢いよく飛び込んできた。
「うわっ!」
その衝撃で後ろに倒れそうになるが、酔っている青年の力は案外弱く、非力な私でもなんとか持ちこたえることができた。
前のめりに走っていた青年は七海の胸にダイブし、勢いを失って止まった。
「その子を取り押さえてくれ!」
そう言いながら、先ほどの三人組がこちらへ走ってくるのが見えた。