【NARUTO】ごめんなさいから始まる物語【トリップ】
第1章 ごめんなさいから始まる物語
聞こえたのは、無機質な電子音。
ピッ、ピッ、っと、一定の間隔で音が刻まれている。
感じたのは、全身を焼き尽くすような、強烈な痛み。
(どうして…)
私は、助かってしまったのだろうか。
あの時、すべてを終わらせると誓ったのに。
「意識が戻ったようです!」
視界の端に男の顔が見えた。
その男が、大きな声を上げて部屋から出ていく。
私は、ままならない思考に、少しずつピントを合わせていく。
どうやら、病院のベッドの上にいるらしい。
先ほどの男は病院のスタッフだろうか。
(はぁ…)
身体を起こすことができないため、眼球だけを動かして辺りを見回す。
私は、心拍数をモニタリングする機器と、点滴に繋がれているようだ。
聞こえた電子音は私の心拍数を表すものであることを、ようやく頭で理解できた。
それにしても、体が痛い…。
まあ、自業自得ではあるのだが。
ベッドに横たわった状態から何もできないため、
病室の天井を見つめていた。
病室といえば、床も天井も真っ白で無機質なイメージがあったが、
自分が今いる空間はそうではなく、むしろ木調で温かみを感じるような部屋であった。
どのくらいの間、天井を見つめていただろうか。
気づけば、医者らしき中年の男性と、
目が覚めたときに出会った看護師らしき男性の二人が部屋に入ってきていた。
「気分は、いかがですか」
医者らしき男性に話しかけられた。
私は声を出すことができなかったため、
「大丈夫です」と言う代わりに、小さく頷いた。
「貴方は、火影様の顔岩の下に倒れていました。
高いところから落ちたようです。
命に別状はありませんが、全身を複雑骨折しているようです。」
『火影様の顔岩』というワードに聞き覚えはなかったが、
私が生き延びてしまったこと、全身を複雑骨折していることは分かった。
「里中を調べてもらいましたが、貴方の身内は見つかりませんでした。
ご自身について、分かることがあれば教えてください。
もちろん、今は話せないでしょうから、回復してきてからで構いません。」
私は東京都に住んでいて、都内の雑居ビルから降りたのだ。
確かに家族は地元の田舎に住んでいて東京都にはいないが、
私が降りた痕跡から、身分証でもなんでも見つかるはずだ。