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【NARUTO】ごめんなさいから始まる物語【トリップ】

第3章 新生活


七海はベストを受け取り、服の上から羽織った。
見た目では分からなかったが、実際に着てみるとズッシリと重く感じた。

(忍ってすごいなあ…)

普段から四六時中このベストを身に着けているという事実だけで、
忍の体力気力の凄さが伺えた。


「家、どっちだ?近くまで送ってやるよ」


「え…?」

服を貸してもらっただけでも申し訳ないのだ。
送ってもらうなんて、とんでもない。

七海は断ろうとした。


「そんな、申し訳ないから…」

「服貸すついでだから。で、どっち?」



「…こっちです」

これ以上断り続ける気力もなかったため、私は力なくアパートの方角へと歩き出した。
フラフラと頼りない足取りで歩く私を横目に、彼はけだるげに着いてきた。


「…」
「…」


特に彼が話し始める気配もなく、私も話しかける余裕はなかった。

二人の間には夜風が吹き、火照った私の熱がゆっくりと冷まされていくのを感じた。



「ここで、大丈夫です」

アパートの近くの十字路でそう言い、ベストを脱いで青年に返した。
ここから歩いてすぐ家に着くため、胸元は手で抑えることにした。


「おう。…気をつけろよ」


青年はあっさりとそう言うと、ベストを受け取ってすぐに踵を返した。


(何か言われると思ったけど、そんなことなかったな)


彼の下心の無さに若干拍子抜けしながらも、向けられた背中にお礼を言った。


「ありがとうございました…いつかお礼を…!」

青年は何も言わず、ベストを着ながら片手を上げ、もと来た道を帰っていった。





彼の姿が見えなくなったあと、七海は風船がしぼむようにその場にしゃがみ込んだ。


(はあぁ……恥ずかし……)


恐らく自分よりも10ほど年下の青年に、あんな場を見られて助けられるとは思わなかった。
自分の情けなさを痛感し、酔いが覚めるのと同時に恥ずかしさが襲ってくる。


「アラサーにもなる女が、一体何してんだか…」


記憶を振り返れば溜息しか出てこない。
明日も仕事がある私は、急ぎ足でさっさと家まで帰ることにした。

周りは寝静まった住宅街、どうせ誰も見ていないだろうと
胸元を抑えていた手を外し、大股で家路を急いだ。

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