第8章 変わり行くもの
【メルクside】
「い゛ーーーー!」
「深呼吸なさい!」
ついにティアさんの出産が始まり、半日が過ぎようとしていた。同じ長椅子に猫を抱えたマービンさんだけじゃなく、リナリー・リーにラビとカミラ監査官が座りただただ窮屈。おまけにマービンさんがずっと貧乏ゆすりしてて椅子がガタガタと揺れるから私含め他全員が椅子から立ち上がる。
「マービン、心配なのはわかるけど椅子ガタガタすんなって。座り辛ぇさ。」
「あ…ああ…すまん…。」
「ここかな、ティア・ハスキンが出産してる医務室は。」
視線の先には花束を持った眼鏡をかけてる中年の男。この人はたしか、枢機卿だ。枢機卿に気付くと直ぐにカミラ監査官が立ち上がって間に入る。
「どういった御用でしょうか。枢機卿。」
「未来ある子供が生まれると聞いて花束を持ってきたのだが、まだだったようだね。」
「何、中央庁の奴?」
「枢機卿は中央庁の最高責任者教皇の助言者。私も一度見たことあるだけだけど…。」
「カミラ監査官、ルベリエに付かずにこんな所で油を売ってていいのかな。」
「ご心配なく。私の任務はブックマンとブックマンJrの監視ですので、彼がここに来ている以上私も付き従う必要がある、というだけです。」
カミラはあのクソ父の部下だけどリンクと違って全く信用も信頼してない、むしろ嫌ってるようだから、他の中央庁の方の事も嫌いなのだろうが、流石に枢機卿に喧嘩口調はまずいと止めようとした時
ふぎゃあ
その産声に皆が顔をドアの方へ向ける。暫くしてから婦長が出てきて、もう入ってもいいと許可してくれて真っ先にマービンさんが飛び込んで行った。猫の姿から人の姿になったレオナさんもやれやれといった風に入っていき、私達もその後を追って部屋の中へ足を進めていった。