第3章 ふたり、それぞれの午後
は、期待するようにこちらを見上げていた。
ランダルは一瞬、体をこわばらせた。
そして、ぎこちない動きで、こくんと小さくうなずく。
「……うん」
声はかすれて、かろうじて聞こえる程度だった。
それでも、はふわりと笑った。
何も気にしていない、やさしい笑顔だった。
彼女が自然に隣へ並んでくる。
ランダルは、ひきつったような笑みを浮かべたまま、
どうしていいかわからず、手の指先をそわそわといじった。
サンダルと革靴。
足音が微妙にずれているのが、妙に気になった。
「……あ、でもさ、もうすぐ夕飯だよね」
がふいにそう言うと、
ランダルはぴくっと肩を震わせた。
反射的に顔を向けたが、
引きつった笑顔のまま、何も言えなかった。
はそんなランダルをちらりと見た。
(……あ、緊張してるんだ)
すぐに察したけれど、
わざと何も言わずに、また前を向いた。
夕方の通りは、涼しい風が吹き抜けていく。
ふたりの影が、夕焼けに染まった路面を、そっと並んで伸びていた。