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おとなりさん【ランフレン夢】

第3章 ふたり、それぞれの午後


家に帰りついたとき、
ランダルは、なんだか現実に引き戻された気がした。



玄関のドアを開けると、
家族のいつもの気配が迎えてくる。



リビングではルーサーが本を読んでいた。
セバスチャンは静かに片付けをしている。



「おかえり」



ルーサーが、ちらりと視線を上げて言った。



ランダルは「……うん」とだけ答えた。



特に変わったこともない、
ふだん通りのやりとりだった。



だけど、心の中は、
ざわざわと騒がしいままだった。



食事をしていても、
ルーサーの声を聞いていても、
何をしていても、
ずっと頭のどこかで、のことを考えていた。



夕焼けの道。
並んで歩いた距離。
振り返ったときの笑顔。



断片的な記憶が、
胸の奥を、何度も何度も叩いていた。



食事が終わり、皿を流しに運び、
最低限の会話を交わして、
それから自室に戻った。





部屋の窓を開けると、
すうっと冷えた夜の風が吹き込んできた。



向かいにある、小さな家。



の家。



窓は閉じられているけれど、
カーテンの隙間から、かすかに明かりが漏れていた。



ときどき、
その光を横切るように、影がふっとちらついた。



きっと、が部屋の中を動いているのだろう。



姿ははっきり見えない。
でも、それだけで十分だった。



彼女がこの世界にいて、
すぐ近くにいるということが、
今はただ、それだけでよかった。



ランダルは、窓枠にもたれかかるようにして、
じっとその光を見つめた。



名前を呼ぶこともできずに、
ただ、胸の奥で、
何度も、何度も、
のことを思い続けていた。





夜の風が、カーテンをふわりと揺らした。
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