第8章 6。
「はぁ…やっと寝てくれたよ。テンションが高くて、なかなか寝てくれなかった」
リヴたちを寝かしつけていたシイナは、二人の部屋から静かにドアを閉め、顔をしかめながら疲れた様子でリビングへ戻ってきた。
「はは、お疲れ様。いつもありがとう。そうだね、普段と変わり映えしないから、今日はよほど楽しかったんだろうね。きっと、朝までぐっすり眠ってくれるよ」
私は椅子に座り、苦笑いを浮かべながら洗濯物を畳み、畳み終わったものをテーブルの上に並べて置く。そして、彼女に労わりの言葉をかけ、自分のティーカップに入った紅茶を差し出した。すると、彼女はすでに冷めてしまった紅茶を飲み干し、小さく息を吐いた。
「でも、よかった。ルアもまた眠れるようになったから…」
すると、シイナは私とテーブルを挟んで椅子に力なく座り、両肘をテーブルに置いて顔を両手で覆いながら、くぐもった声で一言呟き深呼吸をした。私はその言葉を聞いて「そうだね」と返事をし、ふとリヴたちが寝ている部屋に視線を向けた。
シイナは昔からリヴの寝かしつけが得意で、我が家がルアを引き取った後も、二人の寝かしつけを担当してくれていた。ルア自身も何度かこの家に泊まったことがあるが、基本的には夜になると仕事を終えた母親が迎えに来て、自分の家で母親と一緒に寝ていたのだ。
そのため、突然「当たり前の日常」が失われ、母親の存在も失ってしまった。ルアはその不安と悲しみから、我が家に引き取られた当初はまともな生活を送ることもできず、眠ることすらできなかった。しかし、私とシイナ、そしていつも一緒に寝ているリヴは、ルアが落ち着いて眠るまで共に起きていたのだ。
私たちは、あの子が抱えている痛みが計り知れないものであることを理解しつつ、懸命に安心できるように日々接してきた。
その甲斐あって、最近やっと少しずつ落ち着きを取り戻し、以前のように普通の生活を送れるようになり、眠れるようにもなった。私たちはその事実に非常に安心感を抱き、嬉しい気持ちでいっぱいだ。