第7章 5。
確か、このマントはリヴァイが着なくなったもののお下がりだったはずだ。兵士を辞めてからもそれを処分せずに、これまで大切に保管しているとは思いもよらなかった。とっくに処分しているものだと思っていた。
しかし、考えてみると、彼女はリヴァイを嫌いになったから姿を消したわけではなく、むしろ誰よりも彼を愛していたからこそ、彼女なりの深い考えがあったのだと考えていた。
彼女もこれまで何年も辛く苦しい思いを抱え、何かにすがらなければ生きていけなかった。お互いを誰よりも思い、愛し合った。そして、現在もその思いには少しも変わりはない。
私は今日、と再会し、久しぶりに話をして彼女の様子を見ていると、「リヴァイに全てを打ち明けてしまえばいいのに」と何度も思った。
今なら、お互いに手が届く距離にいるのだ。それにもかかわらず、彼女は何年も一人で、ぼろぼろになったマントに縋り続けていた。
私は表現しがたい感情が身体中を駆け巡り、目の前に置かれたマントを震える手で持ち、額に押し当てるように抱きしめた。
なぜ…なぜなのか…なぜ、はリヴァイを思い続けているにもかかわらず、リヴァイのそばにいることを拒むのか。
そんな要領を得ない疑問が私の脳内を締めつけていく。悔しく、寂しく、悲しかった。私はマントを額に押し付けるように抱え、奥歯を強く噛みしめた。
しばらくの間、私はマントを胸に抱きしめていた。すると、脳裏にかつてリヴァイと共に過ごしていたの姿が思い浮かんできた。自然とマントを抱きしめる腕が震え始めた。
「これを…私に…」
そして、私はマントを胸に抱えながら、静かに彼女が私に託したかった「お願い」について詳しく尋ねた。本当は、その「お願い」を聞きたくない気持ちの方が強い。
それを聞いてしまえば、すべてが終わってしまう気がして、恐怖で胸が締め付けられる。さまざまな感情を抱えすぎた私は、息苦しさを感じながら、マントを胸に強く抱きしめ続けた。