第6章 4。
その考えを理解できるかと問われれば、「理解できない」と答えざるを得ない。
それでも、たとえ彼女の考えや思いが身勝手であったとしても、考え方や受け取り方は人それぞれである。生きていれば抱える感情は増え、次第に複雑になっていくため、受け入れがたい現実も存在し始める。
私はそう考えながら「仕方がない」と諦め、彼女の意見を尊重した。そして、もう会えないと思っていた。これまで彼女の考えを尊重するつもりではあったが、「あの時、もっと違う言葉をかけてあげられたはずだ」と何度も後悔している。
彼女が姿を消してから、何度悔やんだことか。思い出そうとすれば際限がない。のことを忘れた日は一日もなかった。時折、彼女に雰囲気が似ている女性を見かけると、人違いだと気づき、落胆する。
そして、そんな自分に呆れていた。そんな日々を送っていた中で「もう会えない」と思っていたのに、人生はどう転ぶ分からないものだ。今、私の目の前には手を伸ばせばを再び抱きしめることができる。しかし、そんなことを考えて自己中心的な自分に嫌気が差した。
「…なんだかなぁ…」
私はそう呟きながら、思わず頭を抱えたくなった。しかし、いきなりそんなことをしたら、二人は不審に思って驚くだろう。
「え?何か言いましたか?」
すると、楽しそうにはしゃいでいた二人は私を見て、不思議そうに首を傾げた。
「ううん、なんでもないよ。さて、そろそろ家に着くかな?」
そして、リヴが心配そうに私に問いかけてきたが、私ははぐらかすように笑い返した。しかし、自分でも驚くほど、その笑みはまるで仮面を貼り付けているかのように不自然だった。それでも、二人は気にしていない様子だった。
「あの…ハンジさん…今日はごめんなさい」
「俺も…忙しいのに…」
しかし、楽しそうにはしゃいでいた二人は、突然肩を落とし俯いて謝罪の言葉を口にした。その様子を見て私は、胸が締め付けられるような感覚を抱いた。
「はは、いいんだよ。私も二人に会えて嬉しかったし、話してみたいと思ったんだ。仕事柄、君たちの年齢の子と関わる機会はなかなかないからね!」
私は二人の謝罪を聞き、努めて明るく安心させるために「大丈夫だ」と笑いかけた。しかし、その言葉はまるで自分自身にも向けられているかのように感じられた。