第11章 9。
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しばらくの間、私はその場で仰向けになり、何も考えずに空を見続けた。そして、空から視線をそらし、徐々に燃えている火が収まっているのを確認した。
しかし、用心のため、完全にすべてが燃え尽きるまで見守っていた。数分後、全て燃え尽きたのを確認し、周囲に何の痕跡も残っていないのを確かめると、持参した水が入った容器から水をかけて足で強く踏みつぶした。
そして、力なく歩き出しその場を離れ、茂みから出た。要件は済んだのだ、この場に長居は無用だと思いながら、足早に古跡の裏手から正面に向かっていると、ふと私の周囲の景色が変わっていき、私は立ち止まり、困惑しながら視線を周囲に向けた。その時だった…
「先輩!待ってください!無理です!無理ですって!」
「何言ってんの!後悔してからじゃ遅いんだよ!?伝えるだけ伝えてみなって!あ、ほら、あそこにいた。ねぇ、リヴァイー!」
「待って…待ってください!先輩ってば!」
今、私の目の前では、若かりし頃の自分と幼さが残るが何やら言い争っている光景が広がっていた。それは、がリヴァイに告白をした日の光景だった。
私は彼女の制止を振り切り、リヴァイの元へ向かって行った。その後ろを焦った様子でが追いかけてくる姿があった。あの頃の私は、ある意味で怖いもの知らずだった。がリヴァイに対して抱いている気持ちを知るや否や、彼女のことを無理矢理引き連れてリヴァイの元へ向かったのだ。
ああ…よりによって、なぜ今、私はこんな時に幻覚など見ているのだろう。しかし、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。少し切ない気持ちを胸に抱いたが、それと同時に温かい感情も抱いていた。
そして、私は昔の自分との姿を目で追っていると、木陰で休んでいるリヴァイの姿が目に入った。昔の私は不機嫌そうな彼に何かを話しかけると、一足先に速足でその場を離れて戻ってきた。
「…え…」
そして、私はその光景を見守りながら、思わず驚きの声を漏らした。なぜなら、一足先に戻ってきた「私」が、私に向かって満面の笑みを浮かべ、親指を立ててグッドポーズをしたからだ。