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世渡りの旅人 【忍たま乱太郎】

第3章 第一章幕 天女編


午後の陽はゆっくりと西へと傾き、午後の光が穏やかに忍術学園を包み込み、地面には長く柔らかな影を落としていた。微かな風がそっと吹き抜け、乾いた土と青々とした草木の匂いが入り交じり、どこか懐かしいような郷愁を運んでくる。森の奥からは、小鳥のさえずりが遠くかすかに響き、葉擦れの音が、まるで囁き声のように静かな空気を震わせていた。蓮は、忍術学園の古びた門の前にじっと静かに佇んでいた。長い旅路の果てにようやく辿り着いたその場所を、どこか遠くを眺めるような眼差しで見つめる。その胸の奥には、言葉にできない微かな震えと、静かな覚悟が波打っていた。だが、彼女の顔には決してそれを表すことはない。長く伸びた前髪の隙間から、青紫色に輝く瞳がただ静かに、深い沈黙をたたえて門を見据えている。この扉の先には、笹田真波の手によって傷つけられ、悲しみに沈んだ子どもたちがいるのだと蓮は改めて胸に刻み込む。蓮は深く静かに息を吸い込み、ゆっくりと手を伸ばして門を軽く叩いた。規則正しく響いた音が、静けさに包まれた学園の中へと静かに広がり、その余韻が完全に消え去る前に、扉の内側から軽やかな足音が聞こえてきた。

「はーい」

門がゆっくりと開かれると、そこには食満たちと同年代と思しき青年が立っていた。栗色の柔らかな髪をひとつに結び、その頭巾の下から覗く瞳は、人懐こく穏やかな光を宿している。
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