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世渡りの旅人 【忍たま乱太郎】

第3章 第一章幕 天女編


市場の喧騒は絶え間なく続き、人々の楽しげな笑い声や商人たちの威勢のいい呼び声が入り混じり、賑やかな空気を醸し出していた。色とりどりの屋台が道沿いに並び、新鮮な果物や野菜、焼き立ての香ばしい団子などが人々の目を惹いている。道端では、無邪気な子供たちが追いかけっこをして遊び、その明るく弾けるような笑い声が通りに響き渡った。道の端には鮮やかな花々が咲き乱れ、村全体をさらに明るく彩っている。柔らかな陽射しが降り注ぎ、穏やかな風が頬を撫でて通り過ぎていった。しかし、その活気あふれる風景とは対照的に、蓮は六人の忍びたちと共に静かな足取りで歩いていた。表情には表れていないが心の奥底では微かな居心地の悪さや落ち着かなさが渦巻いていた。周囲から聞こえてくる会話も、どこか遠くから聞こえてくるようで、明確な意味をなさずに通り過ぎていく。ただ、自分が見ている光景だけが淡々と流れていった。蓮はふと、隣を歩く食満留三郎の横顔に目を留める。賑やかな市場の風景と食満の真剣な横顔が重なり、蓮は言葉を交わさずにじっと彼を見つめていた。その時、不意に食満が蓮の視線に気づいた。

「……どうした?」

食満留三郎が、不思議そうに蓮を見つめ返した。

「そんなに俺のこと見つめて……何かあったか?」

食満の何気ない問いかけに、蓮は小さく息をのんだ。胸の中に迷いが生じ、言葉にするべきか悩んだ。一瞬の間、二人の間に沈黙が流れた。しかし蓮は迷った末に静かに懐へ手を伸ばし、メモ用紙とペンを取り出した。迷いながらも、ゆっくりと文字を綴っていった。

『この前、尊奈門とあなたが話してたことなんだけど……その忍術学園で迷惑をかけてる人が、笹田真波って人なんだよね……?』

蓮がそのメモ用紙を静かに差し出すと、六人の忍びたちの表情にわずかながら緊張が走った。潮江文次郎は視線を逸らし、七松小平太は口元を微かに動かしたが、何も言わず口を閉ざした。
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