第3章 第一章幕 天女編
活気あふれる村の通りに、穏やかな陽射しが柔らかく降り注いでいる。空は澄んだ青色で、時折流れる白い雲がゆっくりと形を変えながら通り過ぎていった。村の道には、色とりどりの幟が風に揺れている。道端には花壇が並び、小さな花々が春の訪れを知らせるように可憐な姿で咲き誇っていた。行き交う人々の明るい声や子供たちの笑い声が響き合い、活気に満ちた喧騒が村全体を包み込んでいる。市場には果物の甘く爽やかな香りと焼きたての団子から立ち上る柔らかな湯気が混じり合い、食欲をそそる香ばしい空気が漂っていた。商人たちの威勢の良い声が村の活気を一層引き立て、人々は思い思いの商品を眺め、値段交渉や世間話を交わしている。そんな中、蓮はその活気とは対照的に、周囲のざわめきから切り離されたような静かな足取りで歩いていた。人波をすり抜けながら、何をするでもなく、ただ淡々と思考を巡らせていた。『彼らから離れるべきなのか……』その考えが蓮の心をよぎるたびに、胸の奥底に鈍く小さな痛みが広がった。タソガレドキ城での日々が、自分にとって本当に正しい選択なのか分からなかった。彼らが自分に示す執着や愛情は、蓮自身にはあまりにも重く、また不可解でもあった。自分にそれほどの価値があるとは、とても思えない。もしくは、この場所を離れて全く別のどこかへ行くことこそが、自分にとって正しい道なのかもしれない。迷いは心の奥深くで静かな波紋となり、果てしなく広がっていく。そんな迷いの中で、蓮はふと足を止めた。村の通りの端に立ち、僅かに顔を上げて前方を見つめる。ゆっくりと目を細めた。
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視線の先には、見覚えのある顔があった。食満留三郎と善法寺伊作である。片や、以前タソガレドキ城で出会った夜の静かな記憶に残る青年……善法寺伊作。もう一人は、市場で偶然出会ったことがある、力強い眼差しを持った食満留三郎だった。伊作とはあの夜以来、再び顔を合わせることはなく、食満とはただ一度、市場の喧騒の中で会っただけだった。彼らの周囲にはさらに四人、見知らぬ者たちが立っていた。彼らは一様に鋭い視線と引き締まった体つきをしており、服装も動きやすさを重視したものだった。