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世渡りの旅人 【忍たま乱太郎】

第3章 第一章幕 天女編


夜の帳がゆっくりと降り、タソガレドキ城は深い静寂の中に沈んでいた。どこからか虫のかすかな鳴き声が聞こえるほかは、まるで世界そのものが眠りに落ちてしまったかのように、静まり返っている。淡い月光が障子を通じて室内に差し込み、畳の上に柔らかな陰影を作り出していた。微かな風が部屋の中を流れ、かすかに揺れる障子が静寂に溶け込むように音を立てた。蓮は静かに眠っていた。艶やかな黒髪は枕元に広がり、毛先に向かって幻想的な青紫色がゆるやかに溶け込んでいる。その髪が月光を浴びて仄かに輝き、夜空に散りばめられた星のようにきらめいていた。整った美しい顔立ちは穏やかな寝息とともに僅かに上下し、その姿はまるで夢の中の住人のように儚げだった。雑渡昆奈門は音もなく蓮のそばに歩み寄った。その足音は影のように静かで、まるで彼自身が闇に溶け込んでしまったかのようだった。彼は静かに蓮の枕元に跪くと、指先を慎重に伸ばして、彼女の長い前髪をそっと横に流した。月の柔らかな光がその顔を照らし、青紫の瞳を覆うまぶたや、細く長い睫毛、右目の下に並んだ二つの泣きぼくろを浮かび上がらせた。その美貌は人間離れしており、見る者の胸に言い知れぬ畏怖と静かな高揚をもたらす。雑渡昆奈門はただ静かに彼女の寝顔を見つめ続けた。その時、ふいに蓮の指先が微かに動き、眠ったまま無意識のうちに彼の手を握った。彼は驚きつつも、その手を静かに握り返した。
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