第3章 第一章幕 天女編
平成の世から来たというその少女の評判は、良いものではなかった。蓮とは異なり、彼女は傲慢だったという。
「彼女は、自分の思い通りにならないと周りに八つ当たりするらしい」
雑渡昆奈門は静かに視線を落とす。
「そして、その天女は“ある人物”を探しているという」
その言葉に、高坂陣内左衛門が鋭く問い返した。
「その“ある人物”とは?」
雑渡昆奈門は微かに笑いながら首を横に振る。
「……それが、まだはっきりとは分からないんだけどね」
再び視線を上げると、蓮と尊奈門が紙風船を打ち合う姿が目に入る。ふわりと宙を舞う紙風船は、まるで穏やかな日常そのもののようだった。だが、雑渡昆奈門はその平穏の裏に、静かに忍び寄る不穏な影を感じ取っていた。