第2章 波乱の1日
再び翠の瞳が覗く。先程の姿からは想像できないほどに、冷たく、重圧感を感じた。
自分に向けて言われている訳では無いのに、身震いしてしまう。
アンリもさすがに驚いたようで、口をパクパクとさせていた。
その様子を見て、アンダーテイカーはフッと嘲笑すると、アンリを投げ捨てるように離す。
地面に強く衝突したアンリ再び苦しげな呻き声をを漏らした。
痛そうだなと思ったが、可哀想だなとは思わない。
アンリの方をじっと見ていると、ふわりと体が浮き上がった。
「うわぁっ」
気づけば、アンダーテイカーに横抱きにされていた。
「ヒッヒッ…このままじゃきっと埒が明かないしねえ。ここは退散するとしよう。」
そう言うとアンダーテイカーは、自分を抱えたまま足早に屋敷の中へ入って行った。
後ろからはアンリの声が聞こえる。何を言っているのかハッキリは分からなかったが、怒りの言葉であることは間違いないだろう。
運ばれている途中、近くにあるアンダーテイカーの顔を見ていた。
時々除く翠の瞳がとても美しい。少し気を抜けば、吸い込まれてしまいそうなぐらいに。しっかり見てみると、顔は整っていて、色白で…。髪も綺麗だ。
ずっと見ていても飽きなくて、目が離せない。しばらく見ていると、アンダーテイカーと目が合ってしまった。
「どうしたんだい?そんなに熱心に見つめられたら、小生照れちゃうよ…。ヒッヒッヒッ…。」
絶対嘘じゃないか。照れるという素振りが微塵もない。
謎すぎるツボに、この変人っぷり。黙っていたらモテるタイプだ、この人。
「はあ…。もったいな…。」
呆れたようにそう呟いた。アンダーテイカーはその言葉に「ヒッヒッヒッ…。」と奇妙に笑うだけで、特に気にもとめていなかった。
ホールの隅に着くとふわりとソファに降ろされた。これでやっと落ち着ける。
「はあ…本当にありがとう。あのままあなたが僕の頼みを断っていたらどうなっていたのやら…。」
「ヒッヒッ…君も厄介な男に好かれたもんだねえ。」
「ほんとに…厄介にも程がある。今回は一時的に切り抜けられたから良かったものの…。はあ、これからまたあいつが押し掛けてくるかもしれないと思うとゾッとする。」
「確かにねえ…。」
そう言うと、アンダーテイカーは顎に手を当て、何かを考え出した。