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【黒執事】銀髪の男とステップを

第2章 波乱の1日


しばらく考えた後、「ヒッヒッヒ…これは名案だねえ…」とひとりで呟いた。

この人の言う名案とは一体何なのか…。今までの様子から見て、とてもじゃないがまともな案を思いついたようには見えない。だが念の為聞いておこうじゃないか。

「そ、その名案とは…?」

「それはねえ…ズバリ…!」

謎の緊張感に包まれ、ゴクンと固唾を飲んだ。微かに自分の心音が聞こえるような気がした。

「ズバリ…?」

リリスは真剣な目付きでアンダーテイカーを見つめながら問う。

そして返ってきた答えは…

「君が小生の恋人になればいいのさ」

「…えっ?」

「ん〜?聞こえなかったかったかい?君が小生の恋人になればいいんだよ」

「え?」

「…随分と耳が悪いようだねえ。今度病院を紹介してあげよう」

「いやいや、そうじゃなくて…」

どういうことだ?あまりにも唐突すぎるだろう!

正気か?という目でアンダーテイカーを見ていると「はて?」と言うように首を傾げた。

「……本気?」

「ああ。名案だと思わないかい?ヒッヒッヒッ…」

確かに、この人といれば守ってくれるし、アンリからの束縛からは逃れられるかもしれない。

でも、今日初めて知り合った人といきなり恋人というのは少々気が引ける。

……どうしたものか。
ここはとりあえず断るべきだろう。

まだこの人のことなんて何も知らないし、本当に善良な人間かだなんて何も分からない。

関係を結んでしまってからではもう遅い。

それはアンリから学んだことだ。

よし、断ろう。

「確かに、凄くいい案だとは思うよ…。でも…」

「でも?」

「僕はあなたのことが好きなわけじゃないし、何も知らないし…。それに、まだ信用もできない。だから、その話に関しては遠慮しておくよ。」

自分を助けてくれて、守ってくれた人に対してこんなことを言うのは少し辛かった。
だから目を合わすことも出来なかった。彼は傷ついていないだろうか。

顔は下を向いたまま、アンダーテイカーの顔に目線を動かす。どうせまたニヤニヤしているんだろうけど。

そんな風に考えていたが、自分の目に写ったものは少し違うかった。

何故かは知らないけれど、前髪を手でかき上げているし、ニヤニヤと言うよりはフッと言う方が似合うような笑みを浮かべている。







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