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【黒執事】銀髪の男とステップを

第2章 波乱の1日


ついに舞踏会当日。
舞踏会は日が沈んだ頃から始まるが、2人は朝から集まり、メイクをしたり、ヘアアレンジを施し合ったりした。
スピアは初めての舞踏会が楽しみで仕方がないようで、支度が終わってもどうにも落ち着かない様子であった。

初めてとはいえ、自分はスピアに比べると落ち着きのある方だ。さすがに、あそこまではしゃいだりしない。

2人で色々なことをしているうちに、そろそろ出発しなければならない時間となった。スピアと手を繋ぎ、いつもより弾んだ足取りで向かう。スピアは弾むと言うよりもスキップをしながら自分を引っ張って行った。

「うわぁぁ〜〜!!綺麗な人がいっぱい!!」
会場に着くのは意外とあっという間で、着くや否や、スピアは眩しいほどの輝きを放ちながら感動している。

そして、はぐれた。

あいつ!!あんだけ人に向かって「絶対にはぐれちゃダメだよ!」とか言ってたくせに…どこに行ったんだよ…

とはいえ、さすがにこの広い空間の中からスピアを探し出すのには無理がある。残念ではあるが、リリスは1人で行動することにした。

人にぶつからないように間をくぐり抜け、ウェイターからレモネードを受け取った。シャンパンやワインも配っていて、折角だからと、1つずつ受け取り味わいながら飲み込んだ。

普段は味わえないような雰囲気に浸りながら自分の時間を楽しんでいると、どこか聞き覚えのある声が遠くから聞こえてきた。

「お兄さんかっこいい!どこから来たの?」
「ご職業は?」
「ご結婚は?彼女は?」

何やらキャッキャっと女が群がっていた。その中から聞こえてきた男の声。

「ふふっ、ごめんなさいね、僕には婚約者がいるんだ」

そんな造りっぽい、青っぽい笑顔を浮かべている男。その男には見覚えがあった。いや、二度と会いたくなかった。

まさに、リリスの元恋人、アンリであった。

重度の束縛や、監禁されかけたことから身の危険を感じ、縁を切ったのだ。しかし、別れ際にこんなことを言われた。
「どこまでも追いかけ続けるからね。」

この言葉が本当だとしたら、今見つかるとかなりまずいかもしれない。そんなことを考えながらアンリのいる方を見つめていると、あろうことか、目が合ってしまった。



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