第4章 恋人2日目
「小生のお客さんは死体だけじゃなくてねえ…小生は情報を売っているんだよ」
葬儀屋は相変わらずニタニタと笑いながら何かの資料をヒラつかせて見せた。
「情報屋……?」
葬儀屋はあくまで表の仕事ということか。となると、今日来る大事なお客っていうのは…
「もしかしてヤクザ?」
至って真剣に考えたのにも関わらず、葬儀屋はギャハギャハと暴れ出す。
「なっ…そんなに笑わなくても」
「ヒッヒッヒ…伯爵がヤクザかぁ〜。ありえない話ではないかもねえ…ヒッヒ」
「伯爵?」
こんな陰気臭い店に伯爵なんて人が来るのか?どんな人が来るのだろうと考えていると、店の扉が開く音がした。
「いるか?アンダーテイカー」
入ってきたのはおそらく貴族であろう、身なりのいい子供と黒ずくめのすらっとした長身の男であった。
子供の方は自分よりも年下な気がする。黒ずくめの男は執事だろうか。その顔は驚く程に整っていて、貼り付けられたように笑顔をつくっている。
「やあ、伯爵〜〜。そろそろ来る頃だと思っていたよ」
葬儀屋が伯爵に向かってヒラヒラと手を振る。
「相変らず陰気臭い店だな…それより」
伯爵がリリスの方をじっと見る。怒られている訳でもないのに、何故かヒヤッとするような冷たい目だった。
「そこの女は誰だ?まさか、愛人でもできたとは言わないだろうな?」
「ヒッヒ…お目が高いね伯爵…この子は小生の恋人さ」
葬儀屋はリリスの座っている後ろに立ち、もたれ掛かるように抱きつく。
「こ、恋人!?」
伯爵が信じられんと言うような顔で葬儀屋を見つめている。隣の黒ずくめの男も目をぱちくりとして驚いている様子であった。
この様子にリリスは眉を下げて苦笑いする。
「ヒッヒ…伯爵のその顔、見てみたかったんだよねえ。さあリリス、伯爵たちに自己紹介を」
葬儀屋はリリスから離れ、背中をぽんと叩く。
「ああ、分かった。」
リリス伯爵の前に立ちぺこりとお辞儀すると、自己紹介を始める。
「っと…僕はリリス・アイラスと申します。どうぞ、お見知り置きを。」
「ああ、僕の名はシエル・ファントムハイヴ。ファントムハイヴ家当主だ。」
シエルが名乗り終えると、隣の黒ずくめの男が口を開いた。