第3章 恋人
「いや、絶対嘘だ!目泳ぎまくってるし、冷や汗かいてるもん。」
「いやっ、これはほんとに違うくて…」
リリスは再びアンダーテイカーに視線を送る。早く助けろと言う意味での視線なのだが、あまり伝わっていなさそうだ。頼むから笑っていないで助けてくれ。
リリスが心の中で願っていると、スピアがさらに詰め寄ってくる。もう少しでソファから落ちてしまいそうだ。
「で、この人はリリスの恋人なの!?」
スピアは眩しいほどに目をキラキラと輝かせている。人の恋愛に興味を示す部分が乙女らしくて可愛い。
「え、いや、この人は…」
どう誤魔化そうかと頭をフル回転させていると、向かい側からガタリと音がした。アンダーテイカーが椅子から立ち上がったようだ。
アンダーテイカーは2人が座っているソファの後ろ側へと向かい、リリスの背後に立つ。
そして、スピアに向かってこう言った。
「この子はねえ…小生の大事な大事な恋人なんだよ」
アンダーテイカーはリリスを後ろから抱きしめた。
リリスは驚きと同時に、親友の前だったと言うのもあり、恥ずかしさが込み上げてきた。きっと今、自分の顔は血にも劣らぬ赤色をしているだろう。
スピアは口元を抑え、あまりの興奮に頬を紅潮させている。
「リリス…!!やっぱりそうだったんだね!!」
横からはスピアのキラキラとした視線が、後ろからは彼のいい香りが漂ってくる。
あまりにもパニックになったリリスは、立ち上がってアンダーテイカーに抱きつき、胸に顔を埋めた。
アンダーテイカーも突然のことに驚いた。
しばらくの間両手が行き場を失っていたが、直ぐにリリスの体に手を回して抱きしめた。
もう一生顔を上げたくない。
「恋する乙女…!!なんて可愛いのかしら!」
後ろからスピアの歓喜と興奮に満ちた声が聞こえてくる。
それにより、もっと恥ずかしくなり「うあぁぁ」と声が出る。
「ヒッヒッヒッ…。小生の恋人は随分と積極的だねえ。」
声も出なくなり、バシバシとアンダーテイカーの体を叩く。彼はそれに動じることもなく、相変わらず「イタいイタい」と言いながらニヤニヤとしている。
「そうだ、そこのキミ。」
アンダーテイカーはスピアの方を指さして、ちょいちょいと人差し指を動かす。