第3章 恋人
耳にかかる息がくすぐったかった。でも、ピタリと密着している体には安心感があって、頭に響く声が少し心地よくて。
気づけば自分も、アンダーテイカーの腰に手を回して抱き締めていた。
アンダーテイカーも自分を抱き締めている手を離そうとはしなかった。
自分の腕の中にいる少女が愛おしくて、離すのが勿体ない。自分の腰に手を回しているのも可愛く感じて、思わず頭を撫でてしまう。
完全に二人の世界に入ってしまったような気がする。もう少しこのままでいたい。2人ともそう思っていた。
「ねえ、アンダーテイカー。もう少しこのままでいてもいいかな?」
「ああ。構わないよ。小生もそう思っていたからねえ。」
2人は目を合わせ、優しい笑みを交わす。そうな風に、恋人としての時間を過ごしていると、少し離れたところから聞き覚えのある可愛らしい声が聞こえた。
リリスはアンダーテイカーからさっと離れ、声がした方にバッと振り向く。
そこにはやはり、親友であるスピアがいた。スピアは少しフリーズすると、ものすごい勢いでこちらへと近付いてくる。
これにはアンダーテイカーもびっくりだ。
確かに合流はしたかったが、今じゃないだろう。
「リリスーーーー!!!!」
スピアが飛びついてくる。
「ぐわぁっ」
スピアの勢いに耐えられず、2人して地面に倒れ込む。
「リリス!どこ行ってたの?心配したんだよ!!」
「いや、はぐれたのはスピアの方じゃないか…。」
「まあ、確かにそうかもだけど…」
スピアと話していると日常に戻ってきた感じがして、なんだか安心する。
ずっと地面に倒れ込んでいるわけにもいかないので、スピアに立ち上がるように促しソファに座り込んだ。
2人で隣同士で座ったのだが、何故か向かいの椅子にアンダーテイカーが腰掛ける。
「ああ!それより、リリス……。さっきこの人とぎゅうってしてたよね!?」
スピアはアンダーテイカーの方を指さし、リリスに詰め寄る。
まずい…さっき出会って今恋人になりましたダなんて正直に言えるわけが無いだろう。
とにかくここは何とか誤魔化そう。
「えっと……見間違えじゃ…ないかな?」
「絶対嘘だ!目泳ぎまくってるし、冷や汗かいてるし…。嘘つくの下手すぎるよ…!」
「いやっ、これは…」