第2章 波乱の1日
「なっ、何…?」
アンダーテイカーの意図が全く読めない。いきなりどうしたんだ?
少し後退りすると、アンダーテイカーは間を埋め合わせるように1歩1歩と近付いてくる。後ろには壁があり、これ以上は下がれない。
アンダーテイカーはリリスの顎を持ち、クイッと上にあげた。もう顔を背けられないように。
「君が小生のことを知るのも、好きになるのも…今じゃないとダメかい?」
「うん…。だって、あなたが必ずしも僕に害を加えないという確証は無いし…。関係を持ってからじゃもう遅いし…。それに、あなたは僕のことを愛していないでしょ?」
自分の声は少し震え、目は泳いでいたと思う。別に怒られている訳でもないのに、何となく怖く感じた。
「確かにねえ…」
きっと完全には納得していないだろう。そんな感じがする。
「それならこうしよう。小生が君を助けた対価として…」
「君が小生の恋人になっておくれ」
アンダーテイカーはこちらにグッと顔を近づけ、囁いた。
リリスはまたもや状況が飲み込めなくなる。頭は混乱状態だが、何とか口を開いた。
「な、なんでそこまでして?そんなのが対価で本当にいいの?」
「ああ…。もし嫌なら小生特製の最高級棺桶に入ってくれてもいいんだよ…ヒッヒッヒッヒッ…」
絶対に嫌だ。まだやり残したことがあるし、スピアともまだ合流出来ていない。
「……分かりました。棺桶に入るのも、家を燃やされるのも嫌なので…。」
「ヒッヒッヒッ…わかったよお、それじゃあ…」
アンダーテイカーが話終わると、唇に冷たくて、柔らかい何かが当たった。
驚いて目を見開くと、自分の1センチ前ほどにアンダーテイカーの顔がある。
これは…キスされている!?
状況を飲み込んでもなお、驚いている自分を見てアンダーテイカーはフッと妖艶な笑みを浮かべ、唇を離した
「ヒッヒッ…そんなに驚かないでおくれ、小生達はもう恋人なんだからねえ。」
「……だとしてもいきなりすぎるでしょ。」
顔を逸らしがちに、ぽそりと呟く。確かに恋人ではあるが、まだ恋人になって5分も経っていないじゃないか。
アンダーテイカーはまた「ヒッヒッヒッ…」と笑うと、リリスを優しく抱きしめた。
そして、こう囁く。
「よろしくねえ、リリス」
「ああ…、こちら、こそ。」