第1章 HappyBirthday〜2025.12.25〜
「リヴァイ様」
猫なで声で近づく真っ赤なドレスを着たその女は、今回この企画の立案者である我が兵団に多額の寄付をしてくれてる伯爵家の娘だ。
腕を組んでその惜しみなく空いた胸元を押し付けてきて今回の誕生パーティの為に用意したドレスはどうやら、料理は御用達のシェフに作ってもらったやら、よく聞く金に物を言わせて傲慢な権限を使った貴族特有の発言に辟易する。
だが最高支援者の伯爵の顔がチラつく以上邪険にすることなど出来ず、エルヴィンからも愛想を振りまけと苦言を呈されたばかりだ。
使わない表情筋をこれでもかというほど使いしなだれかかってくる女をやんわり引き離し、同じ酒の席につくと"誕生日おめでとうございます"と、本当に言われたかった女に言われなかったそれに、落胆の姿勢を隠す事なく静かに目を閉じた。
―――宴会もそろそろ終盤に差し掛かった
今から帰ってももうユキと誕生日を祝うことは出来ない。
はぁ…と、ため息をついてエルヴィンの元に向かおうと思ったら、またもや貴族の女に呼び止められた。
いい加減不機嫌な表情を隠すことなくその女をひと睨みすれば、それに怯むことなく鼻につく香水の匂いを醸し出してヒールの音を鳴らしこちらに近づいてきた。
「なんだ?俺はエルヴィンに用があるんだが」
「ふふ…リヴァイ様、今日は遠路はるばるお越し頂いて、堅苦しいパーティに出席してさぞお疲れでしたでしょう?」
――別室に部屋をとってありますの、ゆっくりいていきませんか?
でた。
強欲な貴族の火遊びの一端が
兵士長という肩書と強さが世に知れ渡り、団長であるエルヴィンと共に兵団の資金繰りを任せられるようになってから度々参加する夜会。
その中には勿論酒だけで終わることはない夜があるのも知っている。
資金を得るために貴族の女と一夜を共にするのはその条件のうちの1つで、後腐れない関係を築いて兵団が潤うならと何度か抱いた事もある。
兵団に資金を、女に快楽を、お互いの欲求と利害のために成り立つ関係は楽で罪悪感など何もない。
――はずだった。今までは。
今は、大切にしたい女がいる。
抱きしめてキスをしたい存在がいる。
だがここで断ればという兵士長としての責任がのしかかる。
リヴァイはエルヴィンを一瞥すると、女の腰に手を回して会場をあとにした。
