第1章 HappyBirthday〜2025.12.25〜
――――もうダメだ
耐えてきて、
耐えてきて、
慣れないお酒も飲んで嫌なことを忘れようと思っても兵長の顔を見たら無理だった。
悲しい時って本当に自然と涙が溢れるものなんだとこの時初めて知った。
兵長と付き合ってから本当にはじめてのことばかりだ。
でもこんな心苦しい事実はいらないし知りたくなかった。
親友が言ってたことはやっぱりホントだった
兵長は今まで、夜会に出席する時に令嬢とそういう事をしていた。
今は違うと否定してはいるが、さっきから香る兵長の匂いとは違う甘い香水がずっと鼻に付き纏ってまた涙が出てくる。
こんなぐちゃぐちゃな顔など見せたくなくて必死で涙をぬぐっても今度は嗚咽が止まらなくて、静まった兵長の部屋はもはやあたしの情けない鳴き声しか聞こえずムードの欠片もない。
「うぅ〜…ひっ……く……っ、ふぇ……グズ…」
こんなに泣いたのはいつぶりだろう。
でも止まらないものはしょうがない。
兵長のような大人の男の人から見ればあたしはまだ20歳になったばかりの小娘で、到底兵長の隣に並んで歩けるような美人でも大人でもない。
きっとすぐに呆れられて煌びやかなドレスを纏ったキレイな女の人がやっぱりいいと捨て台詞をはいてあたしから離れていってしまうに違いない。
でもそんなのヤダ
ずっと想い続けた人とやっと付き合えたのに、『それ』を仕事の一環だと割り切れない自分に嫌気が差す。
ここは恋人として怒ってもいいことなのかもわからない。
でもやっぱり涙は止まらない。
どうしよう、と思っていたら突然体を包み込むような温もりで包まれた。
力強い腕
硬い筋肉
自分とは違う重みが重なり優しく抱きしめてくれたのは大好きな人の温もりだった
「多額の資金を得るために確かに貴族の女と懇意にしていたのは事実だし、寝たこともある。だがそれは仕事でだ。好きでヤッた事なんか一度もねェよ。お前と付き合い始めてからは一度も他の女と寝たことはない」
腕に閉じ止められて響く低い声が胸の奥まで届く。力強いその言葉に嘘はない事がわかっても、やっぱり本人の口からその真実を聞くと悲しかった。
でも、それと同時に顕になったのは、自分の中に燻っていた嫉妬という未知の感情。
そしてあたしと付き合ってから誰ともそういう関係になってないという真実が、胸が躍るほど嬉しかった。
