第2章 黒龍の苦悩の一日
アレックス、とどちらともなく名を呼ぶとフルフェイスヘルメットの男は素早くブレイクの手から荷物を奪い取った。もちろんブレイクがわざと無抵抗で従ったのだがアレックスは無言で夜梟に首を向ける。
「愛鳴會の残党の情報を得た。行くぞ」
承知したと夜梟が頷く。彼女もあくまで野狗子を殲滅する存在なのだ。
『ブレイク、ここまで付き合ってくれたこと感謝する』
「いや、同行するか?」
「いらん、俺一人で十分だ」
だろうなと肩をすくめた。獲物を奪われたくないのか夜梟を独占したいのか。
どんなにアレックスに攻撃力があっても戦闘中の夜梟は憑依していないベティーのように無力だ。しかしこの男が夜梟を、力の源を見捨てることはできないだろう。
深く追求せずブレイクはその場を離れた。彼には他にも仕事がある。
『アレックスも迎えをありがとう』
「自惚れるな。早くアイツらを殺したいだけだ」
『そうか、夕食までには片付けるようにしよう』
アレックスは返事をせずバイクに跨がった。夜梟も後ろに乗る。
夜は始まったばかりだ。