第8章 夕食の問答
DDについて調べる手立ては現代にはない。となれば白スーツの野狗子だがこれも芳しくなかった。
アレは人前に出る時の衣装だったのかもしれない。
『黒づくめの君とは正反対だな』
と愉快そうな夜梟が妙に気に食わない。金麒麟とも愛鳴會とも関わりのない個人の野狗子。異質も異質だ。
『アレは君に固執しているようだった』
「身に覚えがない」
『野狗子は一度狙った獲物を執拗に追い回す習性がある。相性だろうか、フェロモンのような』
「考えたくもない」
アレックスは誰かを好きになったりしない。リサも、も。
『……私はもう用済みなのだろうな』
僅かに哀愁を漂わせる夜梟に苛立ちを覚える。
「封印したのだからあいつも用済みだ」
問題は豹斗鷹だとアレックスは考える。己の産み出した復讐鬼は目の前の女の中で眠っている。
『私を浄化するのは君の役目だ、アレックス』
「無理に決まっている」
『君は君の可能性をもっと信じるべきだ』
科学者らしからぬことをいう夜梟に何故かアレックスは安堵した。