第3章 気に食わない子
空閑「もしチカの兄さんがその「協力者」だったらどうするつもりなの?」
二宮「……別にどうもしない。今更捕まえようもないからな。上層部もこの件は表沙汰にしていない。下手に突いて拡散する方がデメリットがあると考えている」
三雲「……じゃあどうして、二宮さんと鳩原さんはこの件を?」
二宮「この女は二宮隊狙撃手"鳩原未来"。当時の俺の部下で…」
『私の姉です』
二宮「…本部は鳩原が主犯だと考えているが、俺に言わせればこの馬鹿がそんな大層なことを計画出来るわけが無い」
二宮「馬鹿を唆した黒幕が必ずいる。俺はそれが誰なのか知りたいだけだ」
『私も…姉の起こした不祥事の原因は妹として知っておくべきだから』
雨取「……それは、きっと兄だと思います」
おどおどして話にならない…そう思っていたが、雨取さんは私たちの目を見てはっきりとそう言った。
『貴方のお兄さんが姉を唆したってこと?』
二宮「……なぜそう思う?」
雨取「兄にならそういうことができます」
二宮「……それじゃ根拠にならない。もっと具体的な話をしろ」
三雲「…ぼくは麟児さんから少しだけその計画を聞きました」
三雲「麟児さんはボーダーのトリガーを持ってて……「協力者」と一緒に門の向こうを調べに行くって…」
二宮「それを証明する物は?」
三雲「物はないです。けど…麟児さんたちが目星をつけた門の発生予測地点は大体覚えてます。鳩原さんが消えた地点と一致するはずです」
二宮「…なるほどな」
三雲「……ただ「唆した」って言うのは違うと思います。麟児さんは協力者たちと「取引をした」って言ってました。つまりその…鳩原さんにも何か目的があって、利害が一致したから手を組んだんじゃないでしょうか」
『目的があろうとなかろうと、姉に目をつけて言葉巧みにその気にさせた事が問題だって言ってるの。その子の言葉を聞く限り、口が上手いようだし。雨取麟児って人は。そもそも、姉は目的もなく民間人にトリガーを流すような馬鹿じゃない』
((目的なんて分かってる。どうせ、弟の為だろうし))
三雲「それは…」
二宮「……情報感謝する。邪魔したな。帰るぞ美晴」
『はい…』