第3章 気に食わない子
二宮さんがソファから立ち上がるのを見て、私も慌てて立ち上がれば三雲くんも腰を上げて私たちを引き止める。
三雲「待ってください!その…鳩原さんや他の「協力者」の調査はどこまで進んでるんですか!?計画の詳しい内容とか…」
二宮「お前たちに話しても仕方ない」
三雲「ぼくたちは…麟児さんを探すのを目的の一つにして遠征部隊を目指してます」
『遠征部隊…?』
((いくらトリオンが凄いからって人が撃てないその子を連れて?))
三雲「はい。ですから、麟児さんに繋がる情報は少しでも欲しい…!」
二宮「情報を聞いてどうする?」
三雲「え……」
二宮「昨日お前たちの試合を見た。お前たちのレベルで遠征部隊に選ばれることは無い。使い道のない情報を手に入れてどうする気だ?鳩原の真似をして向こう側へ行くつもりか?」
二宮「……もし本気で雨取麟児を探したいなら、こいつをどこか別のA級部隊に入れるんだな」
二宮さんがそう言って親指を向けたのは空閑くんだった。たしかに、彼の実力ならA級部隊で遠征に選ばれても不思議ではないだろう。
二宮「まともな手順で近界に行く気ならそれが一番ましな選択だ」
三雲「……ぼくたちが…ぼくたちが遠征部隊に選ばれたら、教えてもらえますか?その情報を」
二宮「……選ばれてから言え。行くぞ」
『はい…!』
二宮さんの背中を追う前にチラリと3人を見る。特に、雨取さんを。
『もし…もし、貴方のお兄さんが姉を唆してたら、私は絶対に許さない』
((姉の為なんかじゃない。どうせ、姉のことを恨んでも憎んでもいない二宮隊と影浦隊の為に私が代わりに怒ってるだけ))
雨取「…はい…」
玉狛支部から出れば夜も更けており、二宮さんが車に乗りこみながら私を視界に入れる。
二宮「もう遅い、家まで送るから乗れ」
『い、いえ…ここから遠くないので、大丈夫です』
二宮「お前に何かあれば一緒にいた俺に責任があるだろ。いいから乗れ」
『……分かりました…』
恐る恐る車に乗りこみ、エンジンをかける二宮さんを横目で見る。昔の私なら喜んで車に乗って、あれこれわがまま言って困らせるなんてことがあったかもしれない。
でもそんなことはもう起きない。
いつまでも私はこの人たちに、組織に、"迷惑をかけた人の妹"なんだから。