第3章 気に食わない子
三雲くんとその後ろに白い子、村上先輩を倒していた隊員も居て2人は私たちを不思議そうに見つめる。
二宮「二宮隊の二宮だ。こっちは東隊の鳩原」
『どうも』
二宮「とりあえず突っ立ってないで座れよ三雲」
その言葉に三雲くんは雨取さんの隣に腰かけ、白い子基空閑くんは立ったままこちらの様子を伺っていた。
二宮「長居をするつもりはない。手短に要件を言う。雨取麟児……この名前を知ってるな?」
名前を出せば明らかに2人が動揺しているのが分かる。余程鈍感でもない限り、2人がこの名前に覚えがあることは確かだと分かるだろう。
雨取「……わたしの……兄です」
『兄?』
雨取「はい…」
三雲「ぼくは……家庭教師をしてもらってました。麟児さんが何か……?」
二宮「……この女に見覚えは?」
二宮さんは三雲くんの問いには答えず、更に姉の写真を2人に見せる。
雨取「いえ……知らない人です」
三雲「ぼくも覚えがありません」
二宮「本当だろうな?よく見て思い出せよ。作り笑いが顔に張り付いた冴えない女だ」
三雲「この人は誰なんですか?」
『ボーダーの重要規律違反の容疑者よ』
二宮「…トリガーを民間人に横流しして、そのままそいつらと一緒に行方を晦ませた。門を抜けて向こう側へ行ったと上層部は結論づけている」
三雲「……!?民間人と一緒に……!?」
二宮「この女のトリガーの反応が門の中に消えた時、一緒について行ったトリガー反応が3人分ある。だがその3人はボーダーの人間じゃない」
二宮「その日この女以外に消えた隊員はいないからな。つまりトリオン能力を持つ外部の「協力者」が少なくとも3人、この女と同行したことになる」
二宮「民間人にトリガーを流すのは記憶封印措置も適用になる最高レベルの違反行為だ。本部も即座に違反者捕縛の追手を出したが…」
『…その人たちは既に消えた後だったのよ。門の中に逃げられちゃ追うものも追えないし』
((あの日、追手として派遣されたのが当時の風間隊…あんな形で姉を追うことになるなんてね…))
二宮「…俺はこの女の「協力者」について調べている。雨取麟児はその候補の1人だ」
三雲「「協力者」……」