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【鬼滅の刃】戯れ

第1章 戯れ


珠世がようやく我に返った。
「あの人は……!?」
と真っ先に問う。
無惨は珠世を後ろからすっぽりと抱きながら「消えた」と一言告げた。

「どういうこと…!?」

「あれは血気術だ。お前が最も悦ぶ場を作り出すようにしていた。
つまり先程お前は、お前自身が思い描いた幻の夫に見られながら私に犯されていた」

「そんな……っ、まさか、違うわッ…!…」

珠世も人間である内は肉欲を持っていた。しかし、そのような欲は子宮の奥底に秘めたまま、慎み深く控えめな妻や母として生きていた。はしたない欲は隠さねばならぬと思っていたのだ。清く正しき妻というものは、夫に愛でられながら奥歯を噛みしめて静かに快楽を逃すものだと思っていたのだ。
珠世の夫は優しい男であったが、時に激しくその欲をぶつけてくることがあった。我に返ると夫は珠世に深く頭を下げて謝罪するのだったが、案外彼女はそういう行為が嫌いではなかった。女として成熟したその体だけは、人知れず自身の被虐心に気付いていたのだった。


「違うものか。なに、欲が深いほど強い鬼になれるというものだ」

無惨はそう言って嘲笑ったが、耐え難いまでの羞恥により珠世の目からはらはらと大粒の涙が溢れた。
無惨の膝の上で、彼の屹立を今だ深々と受け入れながら一糸纏わぬ姿で羞恥に泣き濡れる──

そのような姿こそが無惨を悦ばせるとは珠世は全く気付いていないようだった。

「珠世……」

そんな無防備な様子が愛おしかった。膝の上の珠世をくるりと半転させ、彼の方を向かせた。少し柔くはなっていたが、深々と貫いているため自身が抜けることはなく、むしろ当たりどころが変わったのか、珠世は小さく声を上げた。

目線が近くなり、珠世の端正な顔が目の前に現れる。無惨は堪らず珠世の後頭部を引き寄せて唇を吸った。
その口吸いの合間にも「憎い、お前が憎い…ッ」と、珠世は無惨の胸板を小さな拳で叩きつけながら、その長い睫毛に涙を浮かべている。

嗚呼、悪態を吐く姿すら愛おしい、と無惨は自身を罵る舌をも絡め取っては吸い上げた。

「鬼は孕まぬ。歳も取らぬ。この美しい肉体のままで永遠にまぐわい続けることが出来ることの、何と仕合わせなことか」

共にその仕合わせを味わおうではないか、と嘯くと再び唇を重ねた。
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