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【鬼滅の刃】破戒

第1章 一


読経が終わると、この頃夜になると亡くなった夫が帰って来るんです、とその女は言った。
どういうことかと僧が尋ねると、毎夜のように私の名を呼びながら戸口を開けてくれと言う声がするのです、と女は答えた。
けれども物の怪の類いかも知れず、恐ろしくて開ける事が出来ないのです、とも言う。

僧は先刻の輩共を思い出した。
夜な夜なやって来るそれは夫でも物の怪の類いでもないだろう。この未亡人の貞淑を奪おうとする下卑た輩が、亡くなった夫の声色を真似て戸口を開けさせようとしているのではないか、と。

「お坊様は、物の怪を祓うことは出来るのですか」と無邪気な声で女が尋ねる。
僧が当然だというように頷くと、「それでは今晩祓っていただきとう存じます」と女は鈴を転がすように言った。
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