第1章 気づいたらすでに

紬はいつものトレーニングを終えて施設に帰る。

『ただいまー』

「紬！おかえり！今すごいニュースやってるよ！」

『ニュース？』

同じ施設育ちの夢乃がワクワクした表情で出迎えくる。

(.すごいニュースってなんだろう？)

リビングスペースにある小さめのテレビに目を向ける。


【－昨日、静岡県立折寺中学校付近で起きた事件についてお伝えします。目撃者の証言によると、ヘドロのようなヴィランが中学生を人質にとりーーーー】


昨日この施設からもそう遠くはない場所で起きた事件について、トップヒーロー、オールマイトの活躍が取り上げられていた。

『っ！？』


しかし、紬が異変を見せたのは、あのオールマイトがこの地に来ていることでは無かった。

「紬！？どうしたの！！」

ニュースを見た途端頭を抑える紬に心配そうに駆け寄る夢乃。


（なにこれ・・・。変な映像が頭に流れ込んでくる）

『っ・・・。だ、大丈夫。ちょっと疲れたみたいだから、部屋行くね』

「そう・・・？無理しないでね？」

突然のことに動揺しつつも、夢乃を安心させるため1人きりになれる様、自分の部屋へ移動する。





【バタン】

『ふぅ・・・』

先程脳内に流れてきた映像を整理してみることにした。

『個性のない私、トラックに轢かれて・・・。その直前何か見てた？』

携帯の画面を眺めながら歩いていると猛スピードで突っ込んできたトラック。
映像はそこで途切れていた。
その前、何をそんな熱心に見ていたのか気になった。

もう少しニュースについて調べてみるかと、携帯を取り出す。


『えーっと、静岡県、オールマイトで出るかな』

検索した結果、すぐにニュースの内容が表示される。

『人質になった子がいたって言ってたな・・・。あ、この子か・・・っ！？！？』


ネットニュースには、人質になった少年と、それを助けるために駆け出した少年の2人が掲載されていた。
それを見た瞬間に、全ての情報が整理され、感覚としては抜け落ちていた記憶が戻る様な状態が脳内を駆け巡る。


『あれっ？私・・・。あぁ！かっちゃん！デク！！！』

（もしかして、もしかしなくても・・・)


『これって異世界転生ってやつ！？！？』