第7章 再会
国見 side
「お、おい国見!!鈴木さんがグラさんだって!!」
「…うん、まぁなんとなく」
「はっ!?マジかよ」
グラさんと最初に誰が呼び始めたのかは今となっては思い出せない。北一の試合の観客席で1番端っこから試合を観ているサングラスを掛けた女の子のことを俺たちは“グラさん”と呼んでいた。
キャーキャー騒いだり、手を振ったり、そんなことは一切せずにただひっそりと観戦して、試合後の挨拶のタイミングには必ずいなかったから、あれは誰なのかと度々盛り上がった。
しばらくの間はみんな、グラさんは及川さんのファンの1人なのだろうということで完結させていたけど、及川さんが卒業して次の代になった初めての試合にもそのグラさんはいて、一層謎が深まった。
グラさんは誰を応援しに来ているのか、誰が目当てでこの会場に足を運んだのか。俺たちは相手が同世代の女の子なだけに、めちゃくちゃ気になっていたけど、やっぱりよく分からなかった。
でも、俺は見てしまった。
影山がノータッチエースを決めた時に小さく拍手をする姿を。影山がツーアタックを決めた瞬間に口元に手を当てる姿を。影山が敵を欺いたトスを上げそれが決まった時に嬉しそうに飛び跳ねる姿を。
…ああ、そうか。
あの子は影山を見に来ていたのか。
別にグラさんに特別な感情なんてない。
俺が好きなのは、ひとりだけだったから。
ただ、なんとなく気になっただけ。
…でもその“なんとなく”は、きっと人間の第六感的なもので。彼女には俺の心を動かす何かがあった。
集中しているはずなのに自然と目で追ってしまう、何をしているのか気になってしまう。頭の中を支配される。
俺がそんなふうになってしまうのなんて、
この世に、ひとりしかいない。
だから俺は、グラさんは鈴木だと、
根拠もないのにそう思っていた。
今日鈴木の姿を見た瞬間、不確定だったその考えが確信となった。白鳥沢に合格して、白鳥沢に入学したはずの鈴木が何故か烏野にいて、その烏野には……影山がいたから。