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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第6章 なんでこうなった?


2階にある部室へ向かうために、私は階段を上った。


先程マネージャーさんに、あの部屋と指された部屋の前で立ち止まる。運動部の部室を見るのは初めてだし、この中にいるんだよな…飛雄が。

自分から関わらないようにしようって言い始めたのに、自分勝手すぎるよね。飛雄が怒ったとしても仕方ないくらいのことだ。


ギィッ



少し古い部室のドアが音を立てて開いた。


「………」

中から出てきたのは飛雄だけだった。



『あ…影山くん、』

「…あいつらから聞いた」

私が説明しようとしていたこともお見通しだ。
中の2人に気を遣ってか、飛雄は小声で話し始めた。

「来るのか、試合」

『うん…見るだけでもいいってマネージャーさんが言ってくれたから』

「お前さ…多分今日来ない方がいいと思うぜ」

『どうして?…あ、やっぱり影山くん怒ってる?』

「なんで」

『だって、そもそも私が学校では関わらないようにしようって言い出したのに…こんなことになったから』

「別にお前は悪くねえだろ、強引に連れてきたって聞いたし」

『…でも、』

「そういうことじゃなくて、今日これから俺たちが行くがっこ」


ギィッ


「……なにしてんの?」


『部室から出てきた影山くんの靴紐が解けてたから教えてあげたの、ね?影山くん』

「ああ…サンキュ、助かった」

飛雄は靴の爪先をコンコンと地面にぶつけて、歩き出した。私たち、本当に嘘が上手になってしまったな。

「…あ、そう。王様気をつけなよ」

『……王様』

「影山のこと」

『へえ……じゃあ着替えてくるね』

「やっぱり鈴木も行くことにしたんだ」

『まあね』

「じゃあ、先に行ってる」


私はツッキーが手で開けたままにしてくれた部室に入り、鍵をかけた。



『飛雄が王様って呼ばれてるの…なんか好きじゃないな』


どうしてそう思うのかは分からない。
…ただなんとなく、そう呼ばれた瞬間の飛雄は嬉しくなさそうな顔をしている気がした。

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