第6章 なんでこうなった?
月島 side
『“はじめまして”、1年4組の鈴木です』
あのバレーボールに取り憑かれたコート上の王様が、鈴木を間近で見たとき一体どんな反応をするのか、それが見たくて連れてきたようなものだった。
それなのに、綺麗に口角を上げて微笑んだ鈴木を前にしても、王様の表情はいつもと何も変わらなかった。
…つまんない。
バレーボール馬鹿が実は可愛い女の子に弱かったとかなら、しばらくの間は面白い玩具になったっていうのにさ。
「あれ、影山全然照れないじゃん」
「だからそう言ったじゃないですか。そんで、俺やっぱり知らないっす、鈴木さんのこと」
「そ、そんなことわざわざ本人の目の前で言わなくてもいいだろ!」
『大丈夫です!私も全然、影山くんのこと全っ然知らないので』
「全然2回言った」
「まあ、2人が初対面だってことはわかったよ」
「『……ふぅ』」
「なに、どした」
「澤村、先生職員会議もう少しかかるって」
「おう、清水」
清水先輩の目線が鈴木に動いた瞬間わかりやすくその目が輝き出した。
「……っ!鈴木さん!?」
『…あ、はい!……この美しい人はどなた?』
鈴木が後ろを向いてコソコソと僕に話しかける。
「バレー部のマネージャー」
『マネージャー…………っわ!』
駆け寄ってきた清水先輩は鈴木の肩を掴み、くるりと反転させると勢いよく手を握った。
「…来てくれて嬉しい、ありがとう!」
『ぁ…ははは……え?』
脳内パニックを起こしているであろう鈴木が僕らを首だけで振り返る。
「言ったじゃん、必要とされてるって」