第6章 なんでこうなった?
恐らくただの数秒が永遠のようにも感じる。
「おっす、影山!今めっちゃ面白いことあってさ〜!この子が田中のことを……って、この子例の鈴木さんじゃね!?」
『えっ…?』
「マジかスガさん!今さらっスか!?」
私、この先輩とどこかで会ったのかな?そう思っていると、体格のガッチリした先輩が申し訳なさそうに謝った。
「ごめん、鈴木さん…俺たち一方的に鈴木さんのこと知っててさ」
『あ…えと』
「その、鈴木さん有名人だから」
『えーっ!?いやいや、そんな!』
「あれ?でもひとりいませんでしたっけ?鈴木のことを知らないって言う人……ねえ、王様?」
隣のツッキーが心底楽しそうな声でそう言った。
「ちゃんと挨拶しなよ、みんなしたんだから」
してない!してないじゃないか挨拶なんて。それなのに、周りの人たちも面白がっているのか何も言わずに飛雄を見ていた。
「ほら、影山」
グレーの髪の先輩に腕を引かれ、最後は背中を押された飛雄。よろっと体勢を崩しながら、手を伸ばせば届きそうなくらいの位置にまで来た。
「…………」
『…………』
私たちが校内でこんなに近くで堂々と目を合わせながら立っている。まさかそんな日がくるなんて思ってもみなかった。
どう接すればいいか分からない。私、ツッキーや山口くんとどんな風に話してたっけ?
変な緊張感から顔が引き攣りそうな私。しかし、目の前の飛雄は焦った様子もなく顔色ひとつ変えずに私を見下ろしていた。
飛雄の目が言っている。
お前はここで何をしてるんだ、と。
そんなもの、こちらが聞きたい。
見つめ合った…というよりも、睨まれて目が離せないと表現するほうがしっくりくるこの状況。その沈黙を破ったのは飛雄だった。