第6章 なんでこうなった?
『…た、田中さん!?』
「なっ…なな、な……っ」
『あ、あのっ…!入学式の時は本当にどうもありがとうございました』
「ヒュッ…」
『同じクラスの野球部の子に聞いたんですけど、どの先輩が田中さんか分からないというのでまたお会い出来るか不安だったんです。これだけ伝えたくて…あの!甲子園出場、応援してます!』
頭を下げて私がそう言うと数秒の沈黙から、田中さんの後ろのほうで大爆笑が起きた。
「あはははは!ちょっ、ちょっとタンマ、やめてお腹痛い!」
「スガ…っ、笑いすぎだろお前!縁下も…っ!」
「こ、これは…不可抗力です…っ!」
『……えっ?』
「やっ、ちょ…先輩たち笑いすぎッス!でも俺、今なら甲子園行けそうな気ィしてきました!」
頭を掻きながら後ろを振り返った田中さんの背中の文字を見て、私は背筋が凍りついた。
『!!』
黒地に白で書かれた〈烏野高校 排球部〉
このジャージ、知ってる。
…やってしまった。
田中さんは野球部じゃない。
よりにもよって、バレー部だった。
「鈴木…、ほんとキミさ…っ」
『…どどどどどどどうしよ』
「クラスで言ってた野球部の田中さんって、田中さんのことだったんだ…俺笑いすぎて、死にそう…!」
『山口くん助けて、笑ってないで今すぐ助けて』
顔が上げられなくなった私は小声でひたすらに助けを求めたが、2人はお腹を抱えて小刻みに震えるばかり。
埒が明かない、そう思った時
「はざっす!スンマセン、
ホームルーム長引いて遅れました……」
先輩たちの奥のほうから、よく知る声が聞こえた。
声の方向に目を向けると、
向こうもまたこちらを見て固まっていた。
『…………』
「…………」