第25章 あの日
影山 side
──「それと影山、解散は19時。場所は駅前のカフェ」
一旦家に帰った俺は、シャワーを浴びて、家を出る時間までバレーノートを書いて過ごした。それでも会場でのことが頭を離れなくて、結局時間よりも早く家を出てしまった。
…ああ、あの店か。
真夏の今は18時半でも嘘みたいに明るかった。カフェのある向かいの通りから何気なく中を覗く。すると、窓際の席に座り真剣な様子で何かを話す2人の姿を見つけた。
ふと頭に、あいつの言葉が浮かんでくる。
──『…私ね、何か困ったことがあると1番に飛雄の顔が頭に浮かぶの』
──『飛雄ならきっと私を助けてくれるってわかってるからかな』
あんなことを言ったくせに。お前は俺からの質問に、何も言わず涙を流すだけだった。
…なあ、今回もその頭に俺の顔は浮かんだのか?
あの涙はお前の心の悲鳴だったのか?
「…………」
例えどんなことだろうが、
お前さえ手を伸ばせば、俺がぜってぇ
「……助けてやるのに」
ポケットから取り出したスマホを見ると、19時まであと20分もあった。
「……っ、」
俺はもう一度だけ美里の姿を見てから、フラリと歩き出した。