第25章 あの日
清水 side
美里ちゃんはきっと、この出来事がきっかけで人を好きになるということが分からなくなってしまったんだ。これから育んでいくはずだった影山への想いも、分かち合うはずだった愛も…何もかもを見失ってしまった。
すぐにでも繋がるはずだった2つの心。
その片方は、今も闇の中をさ迷い続けている。
もう片方の愛は、あんなにも真っ直ぐにその心へと向き続けているというのに。
「………」
ひばりさん、あなたはわかっているの?
あなたの身勝手な言葉が、どれほどこの子の心を乱し、今もなお苦しめ続けているか。
それは、美里ちゃんだけじゃない。目の前で大切な人が傷付いているのに何もしてやれない。そんなもどかしさと行き場のない怒りに苦しむ影山だって立派な被害者だ。
幼い心にトラウマを植え付けるには十分過ぎる出来事…あなたは本当に取り返しのつかないことをしたのよ。
『あの…潔子先輩、すみません』
「どうして美里ちゃんが謝るの?」
『先輩にそんな顔をさせてしまったから…』
「!……ッ、美里ちゃんは本当に優しいね」
『私の話をまるで自分のことのように感じてくれる潔子先輩のほうが、ずっとずっと優しいですよ』
美里ちゃんは、私を気遣うようにニコッと優しく笑った。