第25章 あの日
俯く私を見て、ひばりちゃんはさらに追い打ちをかけるようにこう言った。
「ねぇわたしたち、友達なんだよね?友達のお願いは聞かなくちゃいけないんだよ」
ひばりちゃんの口から飛び出した言葉に、私は困惑した。友達…確かに彼女は私の友達だ。しかし、その言葉に私は何か違和感を覚えた。それは、ひばりちゃんの言う友達という存在が、他の友達と築いたそれとはまるで違うように感じられたから。
彼女の問いに答えられずにいると、ひばりちゃんは言葉を捲し立てた。
「わたし、本当は友達なんていらなかったんだよ!別に一人だってよかったのに、美里ちゃんから友達になろうって言ってきたんだよ!だからわたし、仕方なく友達になってあげたの!それなのに美里ちゃんは友達のわたしのお願いが聞けないの?全部、全部美里ちゃんのせいなんだから、ちゃんと責任取ってよ!」
その言葉に、私は全身が震えた。頭が真っ白になり、罪悪感が波のように押し寄せてきた。
私のせい、
こうなったのは全部、私のせい。
『……私の、せい?』
ポツリと呟く私に、ひばりちゃんは「そうだよ、だから絶対に飛雄くんを好きにならないで」と強く繰り返した。その言葉は耳に水が入ったようにぼんやりと感じられ、どこか遠くで響いた。
飛雄に対する私とひばりちゃんの気持ちの違いってなんだろう。ひばりちゃんの取られたくないってどういう意味なんだろう。
“人を好きになる” って、なんだろう。
…まるで思考回路の一部が壊れたみたいに、考えられなくなった。疑問と答えの間になにかが挟まったみたいに、一切結びつかなくなった。
そんな自分を無視してまで考えることが、
──怖くなった。