第24章 春高一次予選開始!
影山 side
「ねえいいじゃん、名前教えてよ」
「あとLINEも!」
「俺たちが慰めてあげるって」
『…あの、どいてください』
荷物置き場に着くと、美里はどっかの学校の派手なヤツらに囲まれていた。
「教えてくれたらどくからさ」
「ねえスマホどこ?ポッケ?」
『やだ、やめて…っ』
美里の腰に男の手が回るのを見た瞬間、血が逆流するような怒りを感じた。無意識に駆け出す足。俺は美里の背後に回りこみ、右腕を肩の前にまわして強引に引き寄せた。
『!』
「…お?」
「なに、誰?」
男の腕が美里から離れたのを確認すると、俺はそのまま美里とそいつらの間に立った。
『か、かげやまくん…?』
俺のユニフォームに視線が集まるのがわかる。
「こいつ、烏野の9番じゃん」
「え、烏野って…」
「なあお前、もしかしてこの子の彼氏?」
「だったらなんですか」
『えっ…』
背中で美里が小さく声を上げた。
「こんな可愛い彼女泣かすとかありえなくね?」
「そうっスね、気をつけます」
「俺なら絶対そんな顔させないけど」
「はあ、別に興味ないスけど」
「…は?なんだお前」
「こっちのセリフだろ」
金髪のヤツの腕が俺の胸倉に伸びてくる。
「ちょっとあんたたち!何してんの」
「…ゲッ」
「華さん」
「ゲッて何よ、次あの試合観るんでしょ?」
「あ、はい」
「おい照島、行くぞ」
「………」
そいつは伸ばしかけた手をスッと引いた。そして背後から顔を覗かせていた美里をチラッと見て、俺をギロッと睨みつけた。
「照島?」
「っ…クソ、行こうぜ!」
「おっ、おう」
そいつらはバタバタとその場を去っていった。