第5章 第二体育館の烏たち
月島 side
そう思ったけど、この王様はパッと僕の服を離して、背を向けて歩き出した。
「逃げんの?“王様”も大したことないね〜。明日の試合も、王様相手に勝てちゃったりして」
手遊びしていたボールが僕の手に戻ってくることはなかった。なぜならそのボールは小さいのに奪われていたから。
「!?」
「王様王様ってうるせえ!おれもいる!!試合でその頭の上打ち抜いてやる!」
「……は?」
「うっ…なんだぁコラぁ、おらぁ、やんのかぁこんにゃろぉ…」
「そんなキバんないでさ、明るく楽しく程々にやろうよ。たかが部活なんだから」
「たかがってなんだ!」
「そのままの意味、…じゃあまた明日ね」
「おいまてコラぁっ!結局お前どこのどいつだっ!」
「…1年4組 月島蛍。今日からキミらのチームメイトだよ」
「よ、4組!?」
「あ、明日は敵か。“王様のトス”見れるの楽しみにしてるよ」
「………」
腹立つ。自分から煽りに行って相手はまんまと掛かったのに、釈然としないしイライラする。
「ま、まってツッキー!」
「………」
「ど…どうかしたの?!」
「…イライラすんだよ、無駄にアツいヤツって。王様も、さっきのチビも」
「………」
家に帰って、風呂に入っても音楽を聴いても、この気持ち悪い感じは全く消えなかった。