第24章 春高一次予選開始!
公式ウォームアップ開始。
先程と同じように、私は西谷先輩と対人パスをしていた。
横目にトスを上げる飛雄を見ると、やっぱりとても調子が良さそうに見えた。調子の良い時の飛雄は、目付きが変わる。ひどく冷静で、凄まじい集中力を宿した目に。きっと頭の中で何十パターンもの戦術を思い浮かべ、シュミレーションしているのだろう。
そろそろスパイクからサーブに切り替わるという時、飛雄の低くよく通る声で「鈴木さん」と呼ばれた。みんなも驚いたように飛雄を見ていた。
どうしたんだろう、みんなの前で飛雄がこんな風に話しかけてくるなんて珍しい。
西谷先輩に行ってこいと背中を押され近寄ると、飛雄はボールを持って助走位置まで下がった。
『えっ』
…まさかトスを上げろってこと?
すると飛雄は、私の頭上に弓なりのボールを上げてキュッとシューズを鳴らして助走を始めた。
トッ
有無を言わさずに打たされた私のトス。
それをチラリと見た空中の飛雄は、勢いよくそのボールを手のひらで打ち込んだ。
「……ナイストス」
そう一言告げて、飛雄はエンドラインへサーブを打ちに行った。
『あ、はい…』
「鈴木」
『!…菅原先輩』
「悔しいけど、ほんとナイストス」
『っ…いえ!』
「俺だって、影山に上げてくれって言われたらいくらでも付き合うのになぁ」
『………』
「くっそー!俺も影山にトス求められたい!」
子供のようにジタバタする菅原先輩に日向くんが重なった。
『ふふふ』
「なぁ、鈴木」
『はい?』
「今度教えてよ、影山の好きなトス」
ニッと笑ってエンドラインに向かう菅原先輩に私は返事をした。
『はい!』
「おーい、鈴木〜っ!」
『今行きます!』
西谷先輩に催促され、私もボールを抱えてエンドラインへ向かった。