第24章 春高一次予選開始!
「「こんちわっす!」」
「おう、チビ太郎……と?」
「烏野セッターの影山です!」
「おぉ…チビ太郎の相棒か」
「……チビ太郎?」
「う、うっせーな!」
「で、そっちは?」
『マネージャーの鈴木です、よろしくお願いします』
「はーなるほどな、繋心から話は聞いてる。…お前ら、明日から試合なんだろ?今日は少しだけだからな」
「「はい!」」
憧れの烏養前監督を前に、飛雄はワクワクが隠しきれない様子だった。でも、ひとたびボールを手にすると、その目は真剣なものへと切り替わる。
「『………』」
私が飛雄にボールを上げると、日向くんが走り出した。
「わっ…!?」
…ジャンプが合わない。
見ずに打ってたものに動作がひとつ加わるだけで、ここまでのズレが生じてしまうんだ。でもこればかりは感覚と慣れだ。きっと数をこなして修正していくしかないのだろう。
「もういっぽん!」
日向くんの繰り返される “もういっぽん” に応え始めてしばらく、痺れを切らした烏養前監督がため息をついた。
「何遍も言うけど、お前ら明日試合だろ?いい加減にしとけよー」
「もう1本!もう1本だけ!!」
「ラスト1本で切り上げますっ!」
『…すみません、ラスト1本だけ』
「じゃ、ラスト1本な」
「「あざすっ!」」
『ありがとうございます!』
試合前最後の調整。
私が日向くんに目を向けると、ものすごい集中で私の手元を見ていた。そして飛雄に目を合わせ、ボールを頭上に上げる。
ザッザッ、と日向くんの助走の音が辺りに響く。
ドパンッ
飛雄のトスを手のひらドンピシャに捉えた日向くんは、小気味良い音を立ててスパイクを打ち下ろした。
コート内に弾んだボールを見ながら、清々しい表情で笑う2人。烏養前監督は信じられないものを見たとでも言うように、目をまん丸にしていた。