第24章 春高一次予選開始！

サーブレシーブの練習をはじめたみんなを私たちは眺めていた。

この光景が当たり前じゃなくなるかもしれないのか。




「おい鈴木！何してんだこっちこい！」

『ぅあ！？…はいっ！』



西谷先輩に呼ばれて私がコートの中に入ると、飛雄からボールが飛んできた。レシーブで入るつもりだった私は戸惑いながら飛雄を見る。



『えっ…と？』

「お前サーブ、打てよ」

『サーブ？』

「練習してたんだろ、及川さんのサーブ」

『！』



飛雄のランニングやお風呂中にやってたのに、気付いてたんだ。



「西谷さんスンマセン」

「なんだ？」

「こいつのサーブ、慣れといてください」

「鈴木のサーブ…？」

「見たらわかると思うんで」

「おう、任せろ！」



飛雄の目に促されて、私は反対コートへと走った。




『いきます！』




「サッコォイ！」






『………』



及川さんのサーブを私の身長体重で再現するには、この位置からの助走、この角度のサーブトス…




そして、このしなり。








ドガッ





これまでで一番の手応えがあった。
踏み切り、手の当たる位置が完璧だ。





私が着地すると、あたりは一瞬シンッと静まり返った。







「…大…王様？」

「今の…なんの冗談？」






「だぁああっクソ、なんだ鈴木今のすげえ！」




「ノヤの真横抜いたぞ今…」

「あぁ…一瞬及川が見えた」





「鈴木、もう１本頼む！取れるまで！」

『よろしくお願いします！』





「あれ？おれ…なんか頭痛くなってきた」

「ちょっと試合明日だよ？体調不良とかやめてよね」

「ち、ちげーし！…なんでだろ？」



そのあと、何本もサーブを求められクタクタになった私は、しばらく体育館の隅でぺしゃっと潰れていた。

そして、あっという間に練習終了時刻を迎えた。



今日も自主練が始まると思っていたら、例の２人はバタバタと体育館の片付けを行っていた。不思議に思って話を聞くと、なんと今日は烏養前監督の元で速攻の練習をさせてもらうことになっていたらしい。



「お前も行くんだからな」

『私も？』

「当たり前だろ」



噂によく聞いた烏養前監督。

お会い出来るのが楽しみだ。