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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第23章 止まり木


影山 side

バスに乗り込んだ俺たちは、それぞれ座席に着いた。


「…………」

座席に沈むと、体中の緊張が一気に解けた気がした。


窓の外には、バスに手を振る人たちの姿が見える。その中で目が合った赤葦さんに頭を下げると、向こうは軽く手をあげた。


進み出したバス。俺は前の座席で外に向かって大きく手を振る美里を見た。





「………」


さっき赤葦さんに礼を言ったのは、あのよく分かんねえ “興味本位” のおかげで自分の気持ちがハッキリしたからだ。

美里を誰にも渡したくない、と。


俺はこれまで、美里を手放さないためには “ただの幼なじみ” でいればいいと思っていた。どんなに俺が美里のことを好きだとしても、ただの幼なじみでいる限り俺たちが離れることはないと思っていたから。


でも今回の件で、自分の気持ちがどれだけ深いかを痛感した。美里が他の誰かと特別な関係になるのを、ただ黙って見届けるなんてできない。アイツの好意が他の誰かに向けられていくのを一番近くで見守るなんて、考えただけで地獄だと思った。


美里が頼るのも、我儘を言うのも、弱い部分を見せるのも俺だけであってほしい。美里を支えるのも、甘やかすのも、守るのも…これからずっと俺だけに任せてほしい。

あの日初めて知った俺の中のバカみたいな感情は、いつの間にか見て見ぬふりができないくらいに大きくなっていた。



──点が続いて線になっていけばそれでいい、

そんな呑気なことを思っていた自分が嘘みたいだ。美里が他の誰かと一緒にいる未来なんて、きっと俺は受け入れられない。



国見にも、及川さんにも…月島にも、

誰にも美里は譲れない、譲りたくない。



「…………」


幼なじみの俺だけはない、
そう言い放ったお前が、たとえこのまま一生俺をただの幼なじみとしか思えなくても。

…それを、お前を諦める理由にはしたくない。







夕焼けが窓に差し込んで、あまりの眩しさに目を瞑った。





次に目を開けた時には、そこはもう夜の烏野だった。




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