第23章 止まり木
影山 side
意味がわからなかった。
あれだけ俺に美里のことで突っ込んでおいて、恋愛感情が一切ない?この人一体何を考えてるんだ?
ポカンと開いた口を閉じることが出来ないまま、俺は目の前の赤葦さんを見た。
「ごめんごめん、影山ってバレーやってる時は全く隙がないだろ?だから、別の顔も見てみたいなっていう興味本位だよ」
「………」
「だから、ある意味成功だったかもしれない。影山のそんな顔を見られるなんてさ」
「え、いや…マジ意味わかんないんスけど」
「まぁそういうことだから安心してよ、俺は鈴木さんを狙ったりしてないから」
やっぱり意味がわからない、わからないけど…心の真ん中を占めていた不安が一気に和らいだ気がした。
「俺、結構腹立ってます…」
「ハハッ、だろうねごめん」
「はぁ……俺、正直赤葦さんがアイツのこと狙うって言ったのスゲー嫌でした」
「どうして?」
「…こんなガキみたいなことしない、大人な人だと思ってたんで」
「へえ?それは光栄だな」
「…結果褒めてないんスけど」
「俺、鈴木さんみたいにモテる子は対象外でさ。あぁ、でもあの泣き顔はすごく俺好みだったけどね」
「はあ!?」
「影山は鈴木さんの泣き顔どう思う?」
「どうって………苦手、です」
俺が質問に答えると、赤葦さんは一瞬目を細めた。その表情はどこか期待と興味が入り混じっていて、俺はしまったと思った。
「どうして苦手なの?」
「………」
抱き締めたくなるから、なんて口が裂けても言えねえ。
「なんか…たまんない気持ちになるっつーか…なんつーか」
「じゃあ、好きな子泣かせたくないタイプだ」
「…逆にそうじゃないことってあるんスか?」
赤葦さんはニヤリと笑い、少し顔を近づけた。
「俺、結構泣かせたいタイプでさ…泣き顔って興奮しない?」
「こっ!?……し、しません!」
赤葦さんの言葉に顔が熱くなった。
なんだよ、泣き顔で興奮するって!?
…やっぱヤベェ人だ、この人。
「あー…わかんないか、残念」
赤葦さんはそう言いながら軽く肩をすくめた。そして少し離れたところで月島たちと話す美里へと視線を動かした。