第23章 止まり木

影山 side

「幼なじみだったんだ」

「あ…ハイ」


ちょっといいか、と言われて来てみれば話題はやっぱり美里に関するものだった。


あの日、アイツを狙うのは自由だと自分で言ったくせに、いざその光景を目の当たりにしたらどうしようもない焦燥感に駆られた。あのとき、咄嗟に掴んだ美里の腕をどうしても離せなかった俺は、結果的に赤葦さんからチャンスを奪ってしまったのかもしれない。


でも、後悔はしていなかった。



「やっぱり２人が “ただの同級生”っていうのは無理があったと思うよ」

「…そう、スかね」




「単刀直入に聞くけど、影山は鈴木さんのことが好き？」


「マジで単刀直入スね」

「まあね」

「それ知ってどうするんすか？」

「別にどうもしないよ？」

「………」


すると、赤葦さんはフッと笑った。


「…なんスか？」

「いや、そんなに敵視しなくても、と思って」

「別にそんなつもりは…」


赤葦さんは一歩近づいてきて、俺の顔をじっと見つめた。その視線が俺の心を見透かしているようで、思わず目を逸らす。


「影山は、よっぽど鈴木さんのことが好きなんだね」

「……なんでそんなこと」

「顔に出てるから」


顔に出てる、そう言われて動揺が隠せなくなった。赤葦さんの笑みがますます広がっていく。


「だ…だったらどうなんスか？」

「うん、ちょっとね」

「は？」





「ねえ、影山。もし俺が鈴木さんに告白したらどうする？」



その言葉に一瞬息が止まる。何も言えないまま赤葦さんを見つめると、この人は楽しそうに声を上げて笑った。


「っはは、影山って意外と表情が豊かなんだね」

「からかってるんスか？」

「うん、まぁそうかもしれない。影山の反応に興味があってさ」


「…あの、どういう？」









「俺、鈴木さんに恋愛感情一切ないよ」





「……は？」