第23章 止まり木
菅原 side
烏野メンバーが近付くと、黒尾がいち早く振り返った。猫みたいな察知能力だな。
「サームラくん、アレ」
「アレ?」
俺たちが覗くと、水道の横にしゃがみこんで話す2人の姿が見えた。俺からすれば特に気にするような光景でもない。なんつったって、手ぇ繋いで寝てるわけじゃないからな!
「お宅の子ら、どういったご関係で?」
「どういったって言われても…別に、なあ?」
「「「…ッスね」」」
なんか2人の関係を隠そうとして余計怪しい反応になってるのは気のせいか…?
「何だか煮え切らないですね」
「どうした烏野、隠し事か!?」
すると月島が黒尾たちに近付いた。
「だから前に話したじゃないですか、あの2人はみなさんが思ってるような関係じゃないんですって」
「アレ見てもそう言えんの?」
「はい、だって普通ですし」
「へえ、そーお?」
月島が主将連中と自主練してるって聞いた時は驚いたけど、本当にに親しげだ。あの月島がなぁ…なんか感動すんなあ。
「ですよね、菅原さん」
「えっあ、うん…ってか、鈴木が誰かと2人で話すなんて別に珍しいことじゃなくね?テーピングだって1対1だし、他のヤツと水道とか廊下で話してんのも見たことあるし」
「たしかにそうっスね」
「だべ?」
「そうですよ、あの人コミュ力お化けなんだから」
うんうん、と頷く烏野メンバーになんとなく上手く場が収まりそうな空気感が流れた。
その瞬間、
『ぎゃあああっ!!』
「うおぁあっ!?」
2人の叫び声が聞こえた。
「な、なんだ!?」
目を向けると、突然何かに驚いた鈴木が影山に飛びついた。しゃがんだ体勢では鈴木の勢いを受け止めきれなかったのか、影山はそのまま後ろに倒れ込んだ。まるで雪崩みたいに地面に転がり込んだ2人に俺たちはあんぐりと口を開けたままそれを見つめた。