第23章 止まり木
その後も色んなメンバーと雑談をしながら、バーベキューを楽しんだ。途中余った食材で簡単に数品作ると、みんなは喜んで食べてくれた。
油でベタベタになった手を洗いに、体育館の角を曲がったところにある水道へ向かった。すると、その近くに1人しゃがみこむ人物を見つけた。
『……飛雄?』
何してるんだろう。
近付いてみると、何やら飛雄は草むらをじっと見つめていた。
『影山くん?』
「びっ!?……くりした…なんだお前か」
『…悪かったね、私で』
「別にそういう意味じゃねえよ」
私はジャーッと水道で手を洗い、ハンカチで拭きながら飛雄の隣にしゃがんだ。
『ねえ、何見てんの?』
「あそこ」
『ん?』
「ほら、あそこ」
飛雄の長い指の先を辿ると、そこには大きなカエルがいた。
『わっ、カエル!おっきい!』
「でっけえだろ」
『え…あんた、まさか1人でずっとカエル見てたの?』
「ずっとじゃねえ!…ついさっき手洗いに来たらいたんだよ」
さっきはもっとこっち側にいたんだ、とムキになって言うのがおかしくて私は吹き出した。
「笑ってんじゃねえよ」
『ごめんごめん…でも懐かしいな、昔は結構見かけたのにね』
「あぁ、最近は声しか聞いてねえな」
『たしかに夜すごいよね!…あ、みてこっち出てきたよ』
「ほんとだ、やっぱでけえな」
『うん、大きい』
「そういや、さっきお前カエル踏んづけたみたいな声出してたよな」
『ちょっとやめなよ、目の前にいるんだから踏んづけるとか言ったら可哀想じゃん』
「…おいお前、踏んづけるの意味わかるのか?」
『ワカルヨ、フンヅケナイデネ』
「わかった、気をつける」
『ふふ』
こうして生き物に話しかける飛雄を見ると、中1の頃、近所の外飼の犬に吠えられて「俺のこと嫌いなのか?」と深刻そうに聞いていたのを思い出す。『ソンナコトナイヨ、オオキイカラビックリシタダケダヨ』と声を高くして私が言うと、飛雄は必死に身を屈めて小さくなっていたっけ。
ボテボテという効果音がしそうなカエルは、ゆっくりとこちらに歩いてきた。それを見ながら、私たちは何気ない会話を続ける。